ハワイとピカンチとすっからかん

ハワイコン2日目の挨拶でにのは「すっからかん」と言った。
「お金ってのは無限にはなくて、俺らはもうすっからかんみたいになっちゃったからさ」
と。
その言葉に何となく、このハワイコンは嵐のワガママって言うかなんて言うか、ちょっと無理をしてやったことだったんじゃないか、という雰囲気を感じてしまった。(という以下私の妄想の話)

今の嵐には義務的なものが多い。社会的にやらなきゃいけないこと(さしずめCSR)。求められているので応えたい、応えなきゃならないこと。守り続けなければならないこと。そんな中でハワイでコンサートをやるっていうのは、これらを少し後回ししてじゃないとできない、無理をしないとできないことだったんじゃないか。
それでも嵐はやりたかった。これは誰かの為でも商業的な意味でもなくて、嵐が嵐のために、自分の、自分たちの為にやりたかったことなのではなかろうか。

それはピカハフから感じていて、今、嵐は珍しく我を通してる、気がする。求められていることに誠意を尽くすだけじゃなくて、嵐のため、自分のために動けている。気がする。
まるで、一生懸命がむしゃらに走り続けたここ数年分のご褒美を貰ってるみたいに。

というのも、TDCという箱があってひと夏誰かがその箱を埋めなきゃいけない、その役目が嵐に回ってくるまでは求められたことだっただろう。でもそこで「好きなことしていいよ」と言われたこと、それに対し「ピカンチがやりたい」と答えたこと。企画4月、衣装合わせ6月中旬、クランクイン6月下旬、公開8月1日という無茶苦茶なスケジュールに沢山の大人が付き合ってくれたこと。ここにすごく沢山の無理とワガママとそれを叶えてあげた感が詰まっていると思うのだ。

だって、2014年の今、ピカンチだよ?!ピカンチって、あのピカンチだよ??!ピカイチ団地ハレンチでピカンチだよ?!
ピカンチっていうのは、実年齢は成人済みとは言え高校生役なのに煙草を吸ったり公共の場所でお尻ペンペンしたり公約が市民プールでトップレスだったり皆でAV鑑賞会したりコンドームパクって穴開けてリターンしたり人妻に童貞食われたり何故か屋形船沈めたり暴走族がスピード違反して警察の御厄介になるような作品で。(こうやって書くとひでぇな)
主題歌はロックごりごりがなりRapで嵐どうしちゃったの?迷走?って言われたり、初動10万枚割れて最低初動記録樹立したりしたシリーズで。
公開にしたって、事務所が破綻した東京グローブ座を買い取って最初にしたのがこれで、なぜ舞台の劇場で映画???しかも東京単館???映画館で公開もできないの???って当時ですらモメたとってもクローズドな自主制作映画で。

まさに嵐のアングラ期の象徴とも言えるようなこれを、国民行事の紅白を4年連続で司会なさったり、省庁のキャンペーンに起用されたり、お茶の間の人気者となられたお嵐さんが今頃になって掘り返して大丈夫なの??若気の至りって仕舞い込まなくていいの??
正直、あんなばたばたのスケジュールでこれをやるメリットが今の嵐にあるとは思えない。それでもピカンチをやった。それはTDCを埋められて採算が取れるという大人の事情をクリアできたからなのは勿論だけど、嵐がやりたいことを叶えてあげた、嵐のワガママを聞いてあげた、ような印象に感じるのだ。

ハワイも同じだ。嵐が言い出したのではなくハワイ州政府からの要請ありきだったのは本当だと思う。ただ、色んな都合を考えると多少難題だったんじゃないかと思う。でも嵐はハワイでライブをやることを選んだ。
やるなら日本と同じクォリティでやりたい、とムビステを運び出しあんなむき出しの地面にいつものようなセットを組み、沢山の費用を費やしたはずだ。また長期で日本を離れる代わりに仕事をハワイに呼び、都合良く?JALのCMキャラクターをやっていたので大掛かりなファンツアー企画になったり、現地に日立のブースを出したり、東宝系で舞台挨拶の全国中継の実績もあったのでライブビューイングにこぎつけたり、色んな企業を巻き込んで今回のハワイコンはできている。
今回のチケ代はだいぶ高かったけど、それでも赤が出ているのかも知れない。いっぱいCD売って、DVD売って、沢山作った黒もつぎ込んでるのかも知れない。

これはこじつけすぎるただの私の妄想だけど、「すっからかん」っていうのはそういう黒字貯金的なのはもちろんだけど、ワガママ貯金でもあったりして。って。
もういっぱいワガママ言ってやりたいこと叶えてもらって沢山の大人を巻き込んで今の嵐には必要ないかも知れないことを無理なスケジュールでやらせてもらって。これ以上はワガママ言えないよ!やらなきゃいけないことがいっぱい溜まってるよ!って状況でもおかしくないと思う。
これからはちゃんと言われたこと求められてることを精一杯やります、でも一生懸命やってたらまたご褒美もらえるから。だから今はすっからかんになってしまったけどまたしばらく頑張って、ご褒美貯金が溜まったらまた旅行しましょう。
そんな意味かもしれない。

ハワイでのコンサートは参加しているファンにではなく他の誰でもなく、嵐へのご褒美だった。ある人はもやもやと葛藤しながら、ある人は裏切ったような気持ちで自分を責めながら、またある人はその2年半後に悔しい気持ちでまたこちらも自分を責めながら見たハワイの海を、空を、今は晴れやかな、ただただ幸せな気持ちで眺められたはずだ。あの時はあんなに嫌で不安で曇った気持ちでいたのが、15年後には迷いなく自信を持って立っていた。あのハワイの空の下で歌う嵐は自分で自分を肯定してるみたいだった。あぁ自分の15年間は間違いじゃなかった、ってあの夕日を、風を、流れた時間を噛み締めてるみたいだった。
そんな姿を見て、私もここまで嵐を応援してこられて幸せだったなぁって、あの時嵐を見つけて、信じてずっとついてこられて幸せだったなぁってじわぁっと満たされていく、そんなコンサートだった。